4月1日といえば、エイプリルフールを思い浮かべる方も多いかもしれません。でも私にとっては、この日は“社会人としての第一歩”を踏み出した、大切な思い出の日です。
あの日の朝、少し大きめのスーツに袖を通し、慣れない革靴を履いて出かけたのを今でも覚えています。高校卒業時に買ったスーツだったかと思います。今思えば学生みたいで我ながら微笑ましかったな。鏡の前でネクタイを整えながら、「今日から本当に社会人なんだ」と自分に言い聞かせていたような気がします。期待もありましたが、それ以上に不安や緊張のほうが大きく、心臓の鼓動がやけに早かったのをよく覚えています。別記事でも書きましたが、環境が変わることによる損失回避バイアスがきいていました。
私の入社式は山梨事業所で行われました。地元ということもあって移動の負担は少なかったものの、それでも独特の空気に飲まれて、緊張しっぱなし。同じように硬い表情の同期たちと並んで座り、役員の挨拶や会社の説明を聞きながら、「いよいよ始まったんだな」という実感がじわじわと湧いてきました。
入社式のあとはすぐに本社へバスで移動し、そこから一週間の集合研修が始まりました。この一週間がまた、自分にとっては新鮮で刺激的な毎日でした。というのも、人生で初めて「ビジネスホテルに一週間泊まる」という経験をしたのです。
学生時代は、せいぜい修学旅行や合宿くらいしか宿泊の機会がなかった私にとって、毎日スーツ姿でホテルを出て、日中は研修を受け、夜はひとりで部屋に戻るという生活はまさに“社会人ライフ”のスタートラインに立った気分でした。
研修では、会社の基本的なルールやマナー、ビジネスマインドのようなことを学ぶとともに、同期との交流の場でもありました。初対面の人ばかりで最初はぎこちなかったけれど、昼食を一緒にとったり、グループワークで少しずつ話す機会が増えるうちに、少しは打ち解けられたかな。研修最終日にはグループワークをしたメンバで会社周辺で飲みました。そんな動機とは今でも連絡を取り合う、ということはなく、それっきりになってしまっているのが寂しいところ。配属先も違うからね、仕方ないね。
最近では、入社式や新人研修のやり方も年によってかなり違ってきていると聞きます。特にコロナ禍の時期は、完全オンラインでの入社式や研修だった年もあり、同期と一度も顔を合わせないまま業務が始まったという話も聞きました。その点、私の年は対面でのやり取りがあった分、同期とのつながりも築きやすく、心理的な安心感があったと思います。オンラインの利便性ももちろんありますが、やっぱり「実際に会う」ことの大切さを実感した経験でもありました。
4月1日は、これから先もずっと忘れられない日になると思います。不安と緊張、そして少しのワクワクを抱えながら社会に出た、あの春の日。あの時の初心を、久しぶりに思い出してみました。