先日、大学の同窓会講演会に参加し、静岡大学 工学部 機械工学科 准教授の關根惟敏先生のお話を伺いました。講演テーマは「安全・安心な電磁環境設計に向けたシミュレーション技術とAI応用」。
電磁波と電子機器の安全性
關根先生のお話の中で、「電子機器同士の干渉を防ぐために、設計段階から電磁環境を考えることが重要」という点が印象的でした。実物で確認ともなれば、時間もお金もかかるので、設計段階で安全を担保するのは重要よね。
私たちの身の回りの機器は、それぞれが電磁波を発しており、それが原因で通信が不安定になったり、誤作動を起こしたりすることがあります。特に、医療機器や航空機など、安全性が最優先されるシステムでは、電磁波による影響を抑えることが不可欠です。
そのため、電磁波の影響を最小限にするための設計が重要であり、近年ではコンピュータシミュレーションを活用して事前に電磁波の影響を予測する技術が進化しているそうです。
電磁波対策が不十分だった場合に起こる問題
講演を聞きながら、「もし電磁波対策が十分でなかったら、どんな不具合が起こるのだろう?」と考えました。今回は具体的な事例の紹介は少なかったのですが、調べてみると電磁波の影響で発生した問題は意外と多いようです。
① 航空機の計器誤作動
過去には、乗客が使用した電子機器の電磁波が、飛行機の計器に影響を与えた可能性があるという報告がありました。そのため、航空機では離着陸時の電子機器使用が制限されるようになりました。現在では対策が進んでいますが、機器の設計段階での電磁場解析が不十分だと、安全性に影響を及ぼしかねません。
② 医療機器の誤作動
病院内では、ペースメーカーやMRI装置など、電磁波の影響を受けやすい機器が多くあります。例えば、携帯電話の電磁波がペースメーカーに干渉し、動作に影響を与える可能性があることが問題になったことがあります。そのため、病院では携帯電話の使用が制限されるエリアが設けられています。
③ 自動車の電子制御システムの誤作動
最近の自動車には、電動パワーステアリングや自動ブレーキなど、多くの電子制御システムが搭載されています。もし電磁波の影響で誤作動が発生すると、重大な事故につながる恐れがあります。特に、電気自動車(EV)やハイブリッド車では、内部に大きな電磁波を発するモーターがあるため、電磁場解析が重要になるとのことでした。
講演のなかでは自動車のワイヤハーネス解析について言及されていて、私の会社ではハーネス起因でのトラブルは聞いたことがなかったので、新鮮でした。
国ごとに異なる電磁環境基準の問題
先生の話を聞いて、私自身がたまに感じる「不便なこと」を思い出しました。それは、国ごとに電磁環境に関する規制(EMC指令や技適制度など)が異なるため、海外の電子機器を日本で使えないことがあるという点です。
最近では、iPhone用のおされなカメラグリップを見つけたのに、技適マークがないゆえに購入を諦めました。
このように、国ごとに異なる電磁環境基準があることで、消費者が自由に製品を選べない状況が生まれています。せっかくいいものがあっても、それを使えないのは非常にもったいないと感じます。
技術の進化とともに、こうした規制もより柔軟に、そして国際的に統一されていくことを期待したいところです。